採用代行を頼む前に、AIに任せられる作業を分ける
採用代行(RPO)は、採用の業務の一部または全部を外部の会社に委託するサービスです。頼む前に、業務を設計・作成・送信や対応の3種類に分け、AIと社内で進められる部分を除いてから、残りの委託先を選びます。AIを使うと変わるのは、作成の部分です。
まとめて頼むと、AIと社内で進められる作業にも委託の費用を払うことになります。求人票の下書きや質問の洗い出しは、委託しなくても社内で始められます。一方、候補者に送る判断と対応を外部に任せる場合は、委託先の許可の有無まで確かめる必要があります。
人事担当者を対象にした国内の調査では、経験者採用で生成AIの利用に前向きな企業のうち、使っている、または使いたい場面に求人票の作成を挙げた企業が65.3%、スカウトメールの作成・配信が56.0%、選考案内や合否連絡メールの作成が42.0%でした(複数回答)。これらの作業のうち文面の下書きは、委託する前に社内でAIを試せます。
採用の業務は、設計・作成・送信や対応に分けてから委託先を考える
採用代行の見積もりは、「母集団形成」「スカウト」「日程調整」のように業務の名前で並びます。業務の名前のままでは、どこに判断があり、どこが手を動かす作業なのかが見えません。この3種類に分けると、誰に任せるかの違いが見えます。

表1 業務の分け方と、担い手の候補
| 分け方 | 業務の例 | 担い手の候補 |
|---|---|---|
| 設計 | 誰を採るか、何を伝えるか、どの媒体を使うか、誰がいつ見直すか | 社内で決める。AIは調査と案の列挙に使う |
| 作成 | 求人票、文面の型、採用ピッチ資料、記事 | 求人票と文面の型はAIで下書きし、資料と記事は取材をもとに人が書く |
| 送信や対応 | スカウトの送信、応募者への連絡、日程調整、書類の確認 | 社内か委託先。委託するなら許可の有無を見る |
判断の根拠を文書で受け取らないまま設計を委託先に任せると、契約が終わったときに社内に根拠が残りません。設計は社内で持ち、案を作る作業にAIを使います。
作成の部分は、AIで下書きしてから委託の範囲を決める
委託の範囲を決める前に、作成の作業を一度AIで試します。やってみると、どこまでAIで進み、どこで人の話が要るかが手元で分かります。試す作業は次の順です。
- 求人票の本文をAIに渡し、候補者が聞きたくなる質問と、求人票で答えられていない質問を挙げさせます。
- 同じ職種の公開求人を読ませ、他社の打ち出しを一覧にさせます。
- 求人票の言い換えの案を出させ、制度と条件を人が原典と見比べます。
- スカウトを自社で送っているなら、職種ごとの文面の型を作らせ、送る前に担当者が読み直す手順を決めます。
応募者の氏名や経歴をAIに入れてよいかは、社内のルールで先に決めます。決まっていなければ、個人情報のない文書だけで試します。
試した結果、AIで進んだ作業は委託の範囲から外します。残った作業が、見積もりを取る範囲です。見積もりは、同じ作業の一覧を渡して取り、費用は範囲をそろえて比べます。業務の名前だけで頼むと、会社ごとに範囲が違い、金額を比べられません。
候補者の選別や文面の加工を委託するなら、許可の有無を確かめる
外部に任せる範囲によっては、職業安定法の論点があります。この節は一般的な論点の紹介で、法的な判断を示すものではありません。実際の判断は弁護士か社会保険労務士に確かめてください。
厚生労働省の資料は、次の行為を事業として行う場合、判断が自動か人かにかかわらず、職業紹介事業の許可等が必要だとしています。
- 求職者や求人の情報を、自らの判断で選別して提供すること。
- それらの情報を、自らの判断で相手に応じて加工して提供すること。
- 求職者と求人者の意思疎通を中継する際に、自らの判断で加工すること。
同じ資料は、求人者に代わって採用候補者を選定する行為や、求人者の判断によらず選考に関するメールを返信する行為を例に挙げています。判断が自動でも対象になるため、AIを使うサービスでも同じ点を確かめます。個別のサービスが当てはまるかは、宣伝広告の内容や契約の実態から判断されます。
委託先を比べるときは、次の3つを聞きます。
- 職業紹介の許可を持っているか、持っていないなら、どの業務をどの範囲で行うのか。
- 候補者の選定と選考の連絡は、誰の判断で行うのか。
- AIを使う場合、どの作業に使い、誰が結果を見るのか。
採用代行と人材紹介の違いも、ここから整理できます。人材紹介は候補者を紹介して採用が決まると費用が発生する形が一般的で、採用代行は業務を委託する形が一般的です。ただし、名前で分かれるのではなく、実際に何をするかで判断されます。
比べる順番は、社名の一覧ではなく、残った作業に合うかどうかで決める
採用代行の比較記事には、会社名の一覧が並びます。残った作業が決まっていれば、見るべき項目は絞れます。
表2 残った作業ごとの、委託先への確認
| 残った作業 | 委託先に聞くこと |
|---|---|
| スカウトの送信 | 文面を誰が決め、誰の判断で送るか |
| 応募者への連絡 | 定型の連絡か、判断を含む連絡か |
| 日程調整 | 指示された範囲の調整か、優先順位を判断するか |
| 新卒採用やエンジニア採用の専門の作業 | その職種の採用で何を担当してきたか |
代行の会社が「怪しい」かどうかを評判で調べるより、この表の答えを文書でもらうほうが、判断の材料が手元に残ります。
AI採用ディレクターは、代行を頼むかどうかを決める前の設計を担う
スゴスギのAI採用ディレクターが担うのは、戦略・設計・コンテンツ・運用の設計です。役割の全体は採用にAIを使うときの考え方にあります。この記事の図1でいえば、設計と作成の部分です。運用の設計で決めるのは手順と担当の割り当てです。送信や対応そのものは、この役割に含めていません。
手元の見積もりがあるなら、業務の一覧を表1の3種類に書き分けます。それが委託の範囲を見直す最初の作業です。